2020-01-01から1ヶ月間の記事一覧

古傷の疼く(二)

ー 「前に話していたのはたしか、火の仕業?」 窯からギャラリーに戻って打ち合わせのはじめに、今展示のタイトルについて杜胡さんが郷原さんにそう確かめたとき、それはとても良いタイトルだと思った。火がうつわをうつわたらしめる仕業について、窯の構造…

古傷の疼く(一)

photographer:Kuniaki Hiratsuka ー 山道のはじまりのうねりに沿って、茶色いかたまりがいくつもうちつらなっている。不法投棄されたようなそれらは、よく見れば木々——家の解体作業で出てきたいくつもの梁や板——で、なかには江戸時代の立派な梁も埋もれてい…

器用な人間

ー 元旦の翌日に月白へ行った。先月末にはじまった話す連載「月白にて」に来てくださったギャラリーのオーナーさんが見えているというので、仕事帰りに寄ったのだが、彼女はタッチの差で帰ってしまったという。和紅茶を注文して待っていたら、そのとき居合わ…

回復する人間

ー 元旦はいつも晴れる不思議に恵まれて、朝から四時間の散歩をしてきた。なるべく正月の空気にあてられないようさびしい道をばかりとおってゆくと時空のそこだけぽっかりとあいたような境に踏み入ることが何度かあった。正月はなにかと狂うのか、と風邪っぴ…